身近だけども意外と知らないデニム生地
私たちの生活の中で「デニム」という言葉は、すっかり身近なものになりました。
ジーンズを初めとする多くのデニム製品が、様々なジャンルの様々な形で販売されております。
「デニム」とはデニム生地を指します。製品になったものではなく、生地の種類ですね。
今回は、身近だけども意外と知らないデニム生地についてお話します。
デニムの語源はフランス語の「serge de Nîmes セルジュ・ドゥ・ニーム」。
訳すと「ニーム地方の綾織りもの」といった意味になります。
フランス南部のニームの地方ですぐれた綾織りの布地を作っており、布地はしばしば産地の名で呼ぶ習慣があるので、この表現「serge de Nîmes」の後半(「ニームの」という意味の部分)だけを残す形で短縮され、「denim」という表現になったと言われています。
現代ではインディゴ染色されたものをデニムとイメージしてしまいますが、インディゴ染め以外のものでもデニムと呼ぶこともあります。
ではこのデニム生地がどのように作られているのかを、詳しく掘り下げていきましょう。
まずは織り方。ニーム地方の「綾織りもの」と語源にもあったように、デニムは綾織りという織り方で織られた生地です。
綾織りとは
タテ糸(経糸)が2本もしく3本のヨコ糸(緯糸)の上を通過した後、1本のヨコ糸の下を通過することを繰り返して織られものとあります。
平織、繻子織とあわせて三原組織の一つと呼ばれています。
糸の交差する点斜めにでき上がるの特徴で、斜紋線(しゃもんせん)または綾目(あやめ)と呼ばれるれ、できあがった模様は左右非対称になります。織組織の関係上、生地の表面はタテ糸の割合が多く、裏面にヨコ糸の割合が多くでます。平織に比べると摩擦に弱く強度に欠けるますが、地合は密で柔らかく、伸縮性に優れ、シワがよりにくい等の利点も多くあります。
2本交差の場合を「三つ綾(2/1)」、3本交差の場合を「四つ綾(3/1)」と呼び、それぞれ斜線の角度は異なります。四つ綾(3/1)の織物を一般的に「ツイル」と呼んでいます。また(2/2)組織の綾織物もあり、これも四つ綾と呼びます。これはタテ糸とヨコ糸の割合が生地の表裏ともに同一で、斜線の角度が45°なのが特徴(生地の裏表は綾目の向きで判別する)です。
代表的なものとして
ギャバジン(ギャバ)
デニム
ダンガリー
ネル
サージ
ツィード(杉綾織りにしたものをヘリンボーンという)
などがあります。
以上を踏まえ、デニム生地とは10番手以上のタテ糸をインディゴによって染色し、ヨコ糸を未晒し糸(染色加工をしていない糸)で綾織りにした生地になります。デニムはタテ糸がヨコ糸の上を3本、ヨコ糸の下を1本、交差させて織る「四つ綾(3/1綾)」が一般的ですが、現在は様々なパターンの綾目で生地が織られています。
デニム生地の綾目には大きく2種類があります。一般的にはデニムは右綾です。逆の左綾もあります。 糸の撚り方向には、左撚り(Z撚り)と右撚り(S撚り)があり、単糸の撚りは特殊用途のものを除き、通常は左撚り(Z撚り)です。 糸の撚り方向と織物の綾目方向の相性により、左撚り(Z撚り)の糸を逆方向の右綾で織ると緩みが生じ、糸の撚り方向と同じ方向の左綾で織り上げると、糸の撚りが締まって綾目が立ちます。
それによって、右綾デニムはざっくりとした生地感になり、色落ちも点落ちの傾向が強くなります。左綾デニムは表面がフラットになり、光沢感やソフト感が生まれます。 また、アタリが強くなりハッキリとしたタテ落ちになることが多いです。
先にもお話した通り、デニム生地はインディゴ染色したタテ糸と染色加工をしていないヨコ糸を用いて織られていきます。
インディゴ染色
インディゴ染色については、古くは紀元前から世界各地で行なわれてきました。しかし、天然インディゴでの染色は手間やコストが掛かるものでした。1900年頃に合成インディゴが誕生するとほとんどの天然インディゴは合成インディゴにとって代わられることになります。ジーンズに初めてデニム生地が使われた時も、染色は合成インディゴを使ったものだと言われています。
デニム生地に使われるタテ糸のインディゴ染色には、大きく2つの手法があります。
ロープ染色と枷染め(かせぞめ)の2種類です。ジーンズの糸をインディゴで染色する際には、ロープ染色を用いることが一般的です。
ロープ染色とは、ロープ状に束ねた糸を合成インディゴ溶液の槽に端から順に浸けていき、引き上げてローラーで絞り、空気にさらして酸化させることで青く染める、という工程を繰り返す手法になります。この方法は表面から徐々に染まっていくので、「中白」と呼ばれる糸の芯まで染まらない状態が生まれます。このため、ジーンズの色落ちと言われる現象が起こるのです。
一方かせ染めは、藍葉による天然インディゴが入った瓶に、束ねてかせ状に輪にした糸全体を浸け、引き上げて絞り、空気にさらして青く染める、という工程を繰り返す手法です。
合成インディアンによるロープ染色に比べると、芯まで染まり、色落ちはしづらいと言われております。しかし、色落ちに関しては染めたときの外的要因も大きく関わるので不安定ではあります。
現代のジーンズやデニム生地はほとんどが合成インディゴによるロープ染色で染められた糸を使って織られています。しかし本藍染と比べ、どちらが優れているということではなく、性質が違うということを覚えておいてもらうといいかと思います。
オンスとは
ここから、デニム生地を織る工程を見ていきたいのですが、その前に少しブレイクタイム。
知ってるようで知らない、生地のオンスについてお話を。既にご存知の方もお付き合いをお願いします。
よくデニム生地を表記するときに出てくる単位•オンス(oz)。
オンスはアメリカなどで使われるヤード・ポンド法の単位です。オンスに関しては常用オンス、トロイオンス、液量オンスと、測るものに応じて3種もあるようです。
デニムの「オンス」は1平方ヤードあたりの重さで表されていて、オンスの数が大きくなるほどデニムは重くなります。
1ヤードは91.44センチ、1オンスは28.35グラム。
一般的なデニム、14オンスは1平方ヤード(約90cm四方)で約370g(14×28.35g)の重さを持つデニム生地ということになります。
しかし、オンスが大きければ生地が厚くなるという単純なことでもありません。基本的にオンスが上がればデニム生地は重く厚くなりますが、糸の打ち込み本数や太さ、織り込みの密度など様々な要因が合わさるので、見た目や触り心地でデニム生地のオンスを見極めるには経験が必要になってきます。
ジーンズは14オンス前後が一般的な重さです。少し前にはヘビーオンスデニムなんて言うのが流行ったりもしました。ワークパンツだと10オンス前後のものが多く、シャツになると8オンスでも厚手に感じられます。厚みが変ると、生地感や、はき心地も変ります。
デニムの基本要素として、オンスとはどういうものか覚えておいて損はないですね。
さて、デニム生地について掘り下げていくとドンドン様々なことが出てきますね。
改めて知ることで、ジーンズの見方も少し変るかもしれません。
この続きは、次回に。